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音叉点──音楽と●●の交差点 第十二回ゲスト:「RE:SAUNA」森 清隆(代表)/ 籔押 直之(事業推進)

インタビュー 音叉点

っっ「音叉点(おんさてん)」とは「1.音楽と●●が交差するところ 2.チューニングされるきっかけ」を意味する言葉である。ライブハウスでは日々沢山の音楽が鳴り、音と音が混ざり合い音色となるように、人と人が出会うことで新しい物語が始まっている。

この対談ではそんなライブハウスの一つ、渋谷La.mamaでブッキングを主として物語を紡ぐ河野太輔が、音楽に関わるゲストと毎回異なるテーマを切り口に相手との「音叉点=チューニングされるきっかけ」を見つけていく。河野とゲストの会話で、誌面がまるでライブハウスのように広がりを持っていく過程をお見せしよう。

約1年振りの実施となる今回の対談。ゲストは2021年、茨城県結城市にオープンした「KURA:SAUNA」が各所で話題となり、それから2年間で全国に計5店舗、旧い建物をリノベーションしたサウナ施設「RE:SAUNA」をオープンした森 清隆さんと、森さんをサポートする事業推進担当の籔押 直之さん。「街なか音楽祭 結いのおと」オーガナイザーの野口さんから「結城で新しいサウナ事業に成功した音楽好きの若者がいる」という話を聞き、サウナ好きのLa.mama河野さんとの対談が実現した。

都会の喧騒から離れて、「ととのう」をコンセプトにした時間を過ごすことができる「RE:SAUNA」。貸切利用や男女混浴も可能など、若者のサウナ需要に応えることで男女問わず人気を集めている。人気の秘密に迫ったところ、出てきたキーワードは「レジャー施設としてのサウナ」だった。音楽業界には、アーティストも裏方もサウナ好きは多い。絶賛リニューアルオープン準備中の「IE:SAUNA AICHI」内気浴スペースにお邪魔して、お話を伺った。テーマはもちろん「サウナ」。

取材日:2023年4月11日 場所:IE:SAUNA AICHI 取材・文:柴田真希 撮影:加藤春日

プロフィール

河野 太輔(かわの・だいすけ)


1985年1月生まれ。宮崎県出身。自身のバンドでドラマーとして活動後、2005年にLa.mama に入社。入社後はイベントの企画制作、新人アーティストの発掘や育成、レーベル運営など活動は多岐にわたる。


森 清隆(もり・きよたか)


1991年愛知県生まれ。同志社大学卒業後、オリンパス株式会社にて医療機器営業に従事。その後、株式会社リクルートに転職し、在職中に大学時代の友人とともに、茨城県結城市にて蔵を改装した新感覚のサウナ施設「KURA:SAUNA」をオープン。都市型サウナの新ブランド「RE:SAUNA(リサウナ)」をスタートさせ、全5店舗を運営している。


籔押 直之(やぶおし・なおゆき)


1992年愛知県生まれ。立命館大学卒業。RE:SAUNAの事業推進担当として、主にCX向上に関わる業務を担う。その他、幅広いビジネスサポートを手掛ける。


「RE:SAUNA」は空前のサウナブームにより広まった「ととのう」という言葉に関して、身体だけではなく、心から本当にととのう体験を提供したいという思いから生まれたサウナの新ブランドです。 「都市」にいながらでも、喧騒から離れ、混雑から無縁の場所で、四季を感じながら身体をととのえられる環境を目指しています。 ただ身体をととのえるだけではない特別な経験を、日常から少しだけ抜け出して楽しめる、空と緑の隠れ家サウナ「RE:SAUNA」をぜひお楽しみください。

 

RE:SAUNAは温浴施設ではなく、レジャー施設にしたいと思って運営しています

河野太輔(以下:河野):お二人はそれぞれどういった役割ですか?

森清隆氏

森清隆(以下:森):私が大学時代の友人と、茨城県結城市の「KURA:SAUNA」を今からちょうど2年前に立ち上げました。籔押も大学時代からの友人です。普段は外資系の医療機器メーカーで働いてるんですけど、能力も高くて企画力もあるので、店舗を増やすにあたってグループ横断でマーケティングを手伝ってもらうようになりました。

河野:2年間で結城の他にも広島、京都、宇都宮、愛知と5店舗オープンするのはなかなか早いスピードですね。

森:経緯を話すと長くなりますが、どこから話しましょう。5時間くらいかかりますが大丈夫ですか?

河野:それは長いかな(笑)。

森:では手短に話すと(笑)、大学を卒業してから一般企業で働いていましたが、今からちょうど2年前、大学時代の友人と一緒に「サウナをやろう」という話になり、物件を探す中で面白い場所が見つかった結城でKURA:SAUNAを立ち上げました。結城は重要文化財の結城紬という織物で有名な街で、今でも蔵が多いんです。それで蔵を改装してサウナにしてみたら、当時としては珍しかったのか、予想以上に評判となり、他の店舗も展開することになりました。

河野:広島、京都、宇都宮、愛知という場所はどのように選んだんですか?

森:ちょうど広島でもサウナをやろうとしている私の大学時代の先輩がいたのと、元々大学が京都だったんですが、京都にもサウナ事業に興味がある大学時代の友人がいたので、オープンしました。宇都宮は、KURA:SAUNAを一緒に立ち上げた友人の地元なので、彼の希望で始めた場所です。店舗が増えてきたので「RE:SAUNA」というブランドでコンセプトを整えました。ここは私の実家だったんですけど、両親が引っ越してちょうど空き家になったので、改装してサウナにしました。

河野:実家なのは驚きました(笑)。なかなか贅沢なご実家ですね。

森:名古屋から少しだけ離れて、別荘に来たような感覚で楽しんでもらえると思います。今いる内気浴スペースは元々リビングで、映画が見れる休憩スペースは元ダイニングキッチン、2階のサウナ室は子ども部屋でした。男子更衣室は父の書斎だった場所で、女子更衣室は寝室だった場所です。店舗向けに改装してはいますが、家具や調度品は少し残っています。

河野:ドラマがありますね!言われてみれば、面影を感じる気がします。森さんが育った、ここ一宮はどんな場所なんですか?

森:名古屋から電車で10分くらいの場所で、愛知県だと豊田市、岡崎市に次いで人口が多い名古屋のベッドタウンです。かつては毛織物で栄えたんですが、今は人口が多いだけで特色のない街です。

河野:名古屋、サウナの数は多いですよね?

森:多いですね。元々サウナ大国と言われていて、その割に女性が入れるサウナ施設ははとても少ないので、IE:SAUNAをオープンした当初は他の地域に比べて女性客が多いのが特徴でした。

河野:他のお店はどういった客層ですか。

森:茨城と京都に関しては、ファミリー需要が多いです。特に京都は2階にスクリーンがあって、映画を観ることもできるので、人気があります。

籔押直之氏

籔押直之(以下:籔押):小学生の子どもがいる家族が来て、水風呂をプールみたいにして楽しんでいました。貸し切っていただいた理由を聞くと、お父さんがサウナ好きで、奥さんと子供にサウナの良さを広めたかったそうです。実際、奥さんも子どもも楽しんでくださったようで、嬉しかったです。

森:京都については宿泊もできるので、海外からご家族5人で来てくださったり、アーティストの方がツアーの時にお忍びで来てくれたりしています。

河野:5店舗全部、それぞれのコンセプトがあってエンタテインメント性を感じていました。結城と宇都宮は「KURA:SAUNA」、広島は「MACHI:SAUNA」、京都は「MACHIYA:SAUNA」、そしてここ愛知は「IE:SAUNA」ですね。

森:まさに目指しているところです。RE:SAUNAは単なる温浴施設ではなく、レジャー施設にしたいと思って運営しています。小さい頃、よく父親と兄弟3人でスーパー銭湯に行ってたんですけど、それがとても楽しくて。スーパー銭湯って、ワクワクしませんか?巨大なお風呂と、サウナと、ジャグジーがあって、食事どころがあったり、ゲームセンターがあったり、寝っ転がる場所があったり。当時オープンしたばかりだったナガシマリゾートの「湯あみの島」に行った時、「これはテーマパークだ!」と思ったんですよね。それで、スーパー銭湯みたいに楽しい場所を作りたいと、幼少期からずっと思っていました。

河野:カプセルホテル併設のサウナとは違ったコンセプトにも納得します。目指しているところが、レジャー施設なんですね。

森:どこも小規模でまだそこまでに至ってはいないんですが、そのための工夫はしています。大切な人と、余暇を楽しく過ごす場所にしてもらいたくて。だから全ての施設を男女混浴にしてたり、音楽が聴けるようにスピーカーを設置したり、食事ができたり、京都は宿泊もできるようにしています。建物をリノベーションして使うのも、かつての面影を感じて楽しむというエンタテインメントだと思うんです。女性にはまだまだ馴染みがないかもしれませんが、ファミリーとかカップルでここを貸し切って、サウナ好きの男性が女性に教える、みたいに一緒に楽しんでもらえたら嬉しいです。

 

人々の生活に当たり前の存在となると、カルチャーとして成熟する

河野:男女一緒に楽しめるサウナ施設といえば、長野県野尻湖の「The Sauna」が有名ですね。

森:まさにそうで、The Saunaに行った時、よくあるカプセルホテル併設型のサウナ施設や銭湯のサウナとは全く違って衝撃を受けたんです。東京から5、6時間かかっても目指して行く人がいるくらい、完全なレジャー施設として成立してるんですよね。郊外には他にもそういう施設が多少あるので、もう少し都市部でできたら、たくさんの人に来てもらえるのではないかと思いました。それでRE:SAUNAは比較的、都市部を中心に展開しています。

河野:The Saunaの影響もありつつ、お二人が最初にサウナにハマったのはどこですか?

森:一緒に静岡の「サウナしきじ」に行った時、ハマりました。あれは衝撃的だったよね。

籔押:みんなでキャンプに行ったときに、静岡の海岸で羽目を外して、砂浜で寝て泥まみれになったことがあって(笑)。朝目覚めたら身体が泥だらけなので「どこかお風呂入りたいね」と話していたら、近くに24時間営業のサウナ施設、しきじを見つけたんです。今でこそサウナの聖地ということは知ってますが、当時は何も知らなかったので、駐車場に停まっているナンバーが全国から来ていることに驚いて。それで調べたら、どうやらサウナの聖地らしいと。それで「ととのう」を初めて知りました。二日酔いがバッチリ治って、身体も綺麗になって、最高だったんですよね。

河野:身体が綺麗に(笑)。

森:もちろんそのために行ったんですけどね(笑)。温度は熱いし、今まで行っていたサウナと違ったのでかなり衝撃を受けました。それがサウナにハマったきっかけですね。体調がよくなったので、元気に静岡駅の一蘭を食いました(笑)。

河野:素敵なストーリーです(笑)。しきじ、噂通りすごいんですね。帰りに寄ろうかな。

森:ぜひ行ってください!河野さんもサウナ好きとお聞きしてますが、普段はどこのサウナに行くんですか?

河野:東京、笹塚のマルシンスパに行くことが多いです。でも、いつも混んでるのが少し残念です。RE:SAUNAのように貸切にできると並ばなくてよかったり、マナーも気にならないのでいいですね。

森:サウナ人気と同時に、並ぶことも増えたじゃないですか。だから少し高くても貸し切りたいニーズがあると思うんです。並びたくないとか、他の人のマナーを気にせず楽しみたい、男女一緒に入りたい、そういった細かいニーズに応えていきたい気持ちがあります。

河野:ライブハウスもそうなんですが、お客さんが増えると、それぞれ色んなイメージで来ていたり、使い方もそれぞれ違ってくるので、オペレーションをどうしていくかは課題ですね。サウナは増えている感じがありますが、今後さらに増え続けていくんでしょうか?

森:今は第3次サウナブームと言われていて、今後も確実に増えます。東京から始まって、地方にも波及してますね。

河野:3次なんですね。1次と2次はいつですか?

森:東京オリンピックのときにフィンランドから持ち込まれたのが日本のサウナの起源で、第1次サウナブームと言われています。そして90年代から名古屋を中心にスーパー銭湯が増えたのが第2次サウナブームです。第3次の発端は「ととのう」って言葉が流行ったことで始まったと思います。それまでは「汗をかく場所」とか「中年男性が行く場所」という認識がありましたが、「ととのう」という言葉とともに、「恍惚感も楽しむことができる場所」という認知が広がって、流行ったんですね。

河野:「ととのう」が流行り始めて数年経ちますね。

森:中毒性があるので、一過性のものではないと思います。人々の生活に当たり前の存在となると、グッズとか食べ物、KURA:SAUNAのように地方創生とも絡められたり、色んなマーケットへ波及することができるんですよね。そうすると、カルチャーとして成熟してくると思ってます。第3次サウナブームの中で新しい楽しみ方として広まった一例が、アウフグースです。元々は熱波を送るためにタオルを振り回していたのが、いつの間にかピザみたいに回したり、曲芸みたいになってきて。それをみんなでサウナ室で見て楽しむ形になっていますね。

河野:アウフグースは、ドイツ発祥ですか?

森:そうです。フィンランドからサウナがヨーロッパに伝わって、ドイツでアウフグースが流行って、それがフィンランドに戻ってきた逆輸入の形ですね。日本ではこの第3次サウナブームで一気に流行して、さらに日本人らしく独自に変な進化を遂げています。最近の熱波師は、それぞれ自分の曲を決めて、やってくれたりするので特徴があって面白いです。広島のイベントでは、広島カープの応援歌を流して「カープ熱波」をやっている女の子がいたり(笑)。

 

RE:SAUNAは、ライブを見て高揚感を感じるライブハウスと近い存在にしていきたい

河野:楽しみ方、幅広くなっていますね。サウナの本場、フィンランドではサウナはどんな楽しみ方がされているんですか。

森:前に聞いた話で印象に残っているのは、ノルウェーのオスロにある「SALT」というエンタテインメント施設です。サウナ小屋が巨大で、天井も高く、サウナストーブが7個あるんですね。しかも前方がスタンドアリーナみたいになっていて、そこでバンドが演奏しているんです。お客さんは水着で、みんなでライブを観ている。すごいですよね。ノルウェーやフィンランドなど、北欧ではサウナが日本でいうお風呂のように生活に密着していて、教会のように神聖な場所であり、交流の場でもあります。

河野:ライブが観れて、コミュニティスペースでもあるとなると、ライブハウスとも近いですね。日本でも、サウナがそうやって進化すると面白いと思います。

森:それこそRE:SAUNAは、ライブを見て高揚感を感じるライブハウスと近い存在にしていきたいと思っています。公衆衛生としての施設ではなく、「今日はライブに行こうか、それともサウナに行こうか」という感じで、サウナが目的になってくれたら素晴らしいです。

河野:ここの場所も、ライブイベントができそうですね。アメリカのホームパーティみたいなイベントが似合いそうです。

森:まさに「結いのおと」オーガナイザーの野口さんと「サウナと音楽を掛け合わせたら面白そう」という話をして、KURA:SAUNAでラテンミュージックのライブをしたり、DJイベントなども積極的にやっていました。全店舗で音楽を楽しめるようにはしているので、ここでもいずれはイベントをやりたいと思っています。

河野:僕は渋谷La .mamaというライブハウスでイベント制作をしてるんですが、今日ここに来た瞬間に、たとえば人数限定で、アーティストもお客さんも一緒になって楽しめるサウナ付きパーティ企画をやってみたら面白そうだな、と思いました。

森:いいですね!アウフグースイベントやバーベキューは既に決まっていますが、営業許可を取っているキッチンもありますし、映画が観れるスクリーンもあるので、いろんな組み合わせのイベントができると思います。

河野:外気浴スペースが、元々家の庭だったところですよね。2階のバルコニーから庭を覗けるのも、いいなと思いました。野外ですが、音量の問題はありますよね?

森:もちろんありますが、子どもの頃住んでいたので、周りは幼い頃から知ってる人たちです。だから「頼む!今日だけ!」ってお願いしてみます(笑)。

河野:お願いします!今年中にやりましょう。

森:是非やりましょう!イベントやってると「面白いことやってるな」と思ってもらえるし、地域にも認めてもらえると思うので、どんどんやっていきたいです。駐車場もありますし、名古屋からのアクセスも近いのでお客さんも集まると思います。サウナに入って、ビールを飲みながら、音楽を聴いて、サウナ飯もあって…最高のイベントができると思います。