「世界の音楽業界ではLUMINATEのデータが通貨になっている」その理由を訊いてみた

「データは通貨と同じ」と言われてきたが、音楽を宣伝・消費する場所ともにストリーミングが主戦場となり、それは現実となった。音楽データのリーディング・カンパニー、LUMINATEのデータはアーティストが海外でブッキングしたり、現地のレーベルと契約する際、すでに「通貨」に等しい扱いを受けているという。どういうことなのか? LUMINATE社のスコット・ライアン氏に訊いてみた。
(取材:Musicman編集長 榎本幹朗 2025年2月6日)
音楽とテクノロジーの最前線で活躍
榎本:今回は世界中のあらゆる音楽データを扱うLUMINATE社でエグゼクティブ・ヴァイス・プレジデントを務めるスコット・ライアンさんにお話を伺っていきます。
スコット・ライアン:お久しぶりです。
榎本:スコットさんとは10年来のお付き合いで、SXSWやWired誌の特集でもご一緒しましたね。
スコット・ライアン(以下S.R.):初めてお会いしたのは私がThe Echo Nestにいたときでした。
榎本: The Echo NestはSpotifyのレコメンデーション・エンジンの中核になっています。その後、Gracenoteでもお会いしましたね。
S.R.:SpotifyがThe Echo Nestを買収後、Gracenoteへ戻りました。
榎本:Gracenoteも音楽レコメンデーションを手掛ける会社。今はLUMINATEで音楽のあらゆるデータを取り扱っている。常に音楽とテクノロジーの最前線にいらっしゃる方です。
S.R.:はい。もちろん、あなたが新技術の最前線にいたことも知っています。お付き合いはThe Echo NestやGracenoteまで遡りますからね。
榎本:僕がスコットさんのカウンターパートナーだったのは2014年前後。連載で「これから日本でも音楽サブスクが立ち上がります」と旗振り役をやっていたので、そうした仕事もしていました。
スコットさんはソニー時代のGracenoteにもいらしたので、日本と縁が深いですね。
S.R.:日本の音楽業界と仕事をするのは、今回で3社目になります。音楽の好みがグローバル化する中で日本の音楽を輸出するお手伝いができるのは、エキサイティングに感じます。
榎本:昔、音楽談義もしましたが J-POPで今、お気に入りは?
S.R.:LiSAです。
榎本:なるほど。確かバンド・サウンドがお好きで。
S.R.:最近はどんなジャンルでも聴きますね。ヒップホップならAnderson .Paak、EDM ならFisherやJohn Summitといった新世代も聴き始めました。アメリカーナも好きで例えばMichael Jason Isbell。彼の歌詞、ギターが大好きです。
YOASOBIのようなアニメを通じて海外で人気を伸ばしている日本のアーティストもトラッキングしています。
榎本:今だったら羊文学もおすすめです。
S.R.:チェックしておきます。
LUMINATEは立場的にニュートラルな会社
榎本: LUMINATEのルーツのひとつ、Gracenoteはかつてソニーのグループ会社でしたが、その後、ニールセン(米国で著名なエンタメ系のマーケティング・リサーチ会社)と関係が?
S.R.:はい。Gracenoteに戻った私は同社の音楽事業を統括し、ニールセンとも仕事をしていたのですが当時、ニールセン・ミュージックはBillboard USのためにラジオだけでなく、SpotifyやYouTubeのデータも集計していました。
そのニールセンがテレビ事業に注力する方針となったところで、Gracenoteとニールセン両社の音楽事業の統合を提案したのです。
榎本:あれはスコットさんの提案?
S.R.:私というより私たちの提案ですが結果、Billboard USを所有するグループにGracenoteの音楽事業を売却し、いっしょに私も移籍して、事業をLUMINATE(ルミネイト)と改名しました。
榎本:なるほど。そうすると今の親会社はニールセンではない?
S.R.:私たちはもはやニールセンの一部ではなく、エンターテインメントに強い伝統を持つ2つの企業の一部となっています。
1つはペンスキー・メディア社(Penske Media Company)で、米国のBillboardやRolling Stone(音楽メディア)、その他の様々な出版物を所有しています。
もう1つはエルドリッジ社(Eldridge)で、ドジャースやチェルシーのようなスポーツチームなど様々なエンターテインメント資産に加えて、ソニーと提携してBruce SpringsteenやThe Killersなどの音楽カタログも所有しています。
榎本:データやマーケティングだけでなくコンテンツの会社でもある、と。Bruce Springsteenの話が出ましたがソニーとなんらかの財務的な関係は?
S.R.:ありません。3大メジャーだけでなく世界中の何百もの音楽会社が顧客になっていますが特別なパートナーシップはなく、独立性を維持しています。
榎本:つまりメディアに対しても、レーベルに対しても中立的な立場?
S.R.:その通りです。国、レーベル、パブリッシャー、あらゆる面で中立的です。
榎本:ニールセンから独立しましたが今、テレビ関係は?
S.R.:主に米国とハリウッドが中心ですが、映画・テレビ関連の事業も各国へ広げています。さらに、米国のストリーミングビデオサービスを測定して、どの番組がどれだけ人気があるかというデータも提供しています。
榎本:Netflixやアマプラ経由で日本のアニメ・ブームが世界で起こり、米レコーディング・アカデミーが指摘するようにJ-POPブームも始まりつつあります。その際のサポートもできそうですね。
海外ではLUMINATEのデータが「通貨」になっている
榎本: LUMINATEといえばBillboard。しかし読者の多く、たとえば日本のレーベルで働いている方々は「国内のローカルレーベルの業務とはあまり関係ない」と思っているかもしれません。それは正しいですか?
S.R.:必ずしもそうではありません。LUMINATEはチャートに役立つ多くの情報を提供していますが、それは私たちの仕事のほんの一部です。
米国や日本、そして世界70カ国以上で収集しているストリーミング・アクティビティやその他のリスニング・アクティビティで本当に重要なのは、小規模なレーベルやインディペンデント・アーティストにも、彼らのジャンルや、自国を含む様々な国々の市場での ビジビリティ(可視性)を提供できることです。
榎本:じぶんの音楽がどの国のどの都市で、どういった人に聴かれているか可視化できるということですね。
S.R.:はい。私たちは日々のアクティビティをすべて可視化することで、どこでツアーをすべきか、どの都市でプロモーションを行えば意味のある成長ができるかを測定できます。
榎本:国内はもちろん、勝手のわからない国外も「可視化」でツアーやプロモーションのチャンスがわかる?
S.R.:それと同じジャンルの他のアーティストや、同じ国の他のアーティストがどうしているかを知ることも大きいです。そのため、多くの小規模レーベルやインディー・アーティストもLUMINATEのデータを活用しています。
榎本:これは言語に依存するサービスですか? たとえば日本語圏、英語圏など。
S.R.:私たちは伝統的に言語に依存せず、識別子(Identifier)を使用しています。
榎本:データの識別子ですね。例えば、「海外でも活動したい」と考えているアーティストを抱えている日本のローカルレーベルがあったら、彼らはどうやって海外のチャンスを見つけられますか?
S.R.:はい、お見せしましょう。
▲① 出典: ルミネイトCONNECTサービス ワールドワイド・マップ。海外での再生数が、日本での再生数の2倍以上に達しており、海外展開が有望なアーティストだと分かる。
榎本:なるほど。もう一点。ソニーミュージックやユニバーサル、ワーナーのようなメジャーレーベルと契約があるアーティストはアニメとタイアップして、Netflixなどを通じて海外進出できます。Jポップの約90%がアニメとのタイアップで海外展開してるというデータもあります。
しかし、一部の音楽はアニメとは関係なく海外進出しています。日本のローカル・レーベルも武器が必要で、データが海外マーケティングの武器になると思うのですが?
S.R.:その通りです。「自分のジャンルや自身のカタログのデータを見て、一度も訪れたことがない国々で人気があることに驚いた」というケースを私たちたくさん見ています。
それはアニメが理由かもしれませんし、SpotifyやYouTube、Apple Music、Amazonで露出しているからかもしれません。
どの国のどの都市でじぶんの音楽が聴かれているかデータを持っていたら、地域のプロモーターと共有してツアーを組んだり、現地の番組やプロモーションと繋げることもできます。まず、どこで何が起きているのか、何が可能なのか、把握するのが始まりになります。
榎本:LUMINATEを通じて道筋を見いだせるということですね。
S.R.:はい。私たちは「通貨(currency)」という言葉をよく使います。なぜならこのデータは音楽ビジネスの通貨だからです。
榎本:「データが通貨に等しい存在になる」と言われてきましたが、ストリーミングの普及で、音楽でもそれが現実になったということでしょうか?
S.R.:そのとおりです。例えば、日本のアーティストが米国の会社とツアーについて話す時、そのアーティストがLUMINATEのデータを使って「見てください。この都市で私は本当に人気があります」と言えば、ツアー会社もLUMINATEのデータを見て「ああ、LUMINATEのデータなら信頼できる。これは正しい」と考えるのです。
榎本:Billboardでも名高いLUMINATEのデータがあれば海外でブッキングできる?
S.R.:そうしたことが常に起こっています。
この通貨、つまりデータへの共通の信頼は、私たちのデータは出元が保証されたデータで、スクレイピングされたものでも推測されたものではないことが根拠になっています。これがLUMINATEのデータの強みです。
S.R.:特にグローバルツアーを組む場合、大手がみなLUMINATEのデータからストリーミングの数値を分析して、現地のプロモーターにアプローチしてブッキングしていくツールになっています。
榎本:つまり、LUMINATEのデータはBusiness Card(名刺)になっている?
S.R.:はい。タレントマネージャーやレーベルが異なる国でサインやプロモーションをしようとしたり、パートナーを探したりする際にも役立ちます。
なぜならそれが通貨であり、誰もが同じ情報を見ているからです。これは多くの国々でA&R(アーティスト&レパートリー)の仕事の一部にもなっています。
榎本: LUMINATEのデータは、現地のレーベルと契約する際にも通貨になっているということですね。非常に面白い現象です。
S.R.:これだけのデータを持っているのは私たちだけです。それが大きな強みです。
メタデータだけでなく全ての音楽データを扱っている
榎本:データの強みというと、例えばMusic Story社はライバルですか? 彼らも音楽のメタデータの会社ですが。
S.R.:実際には違います。私の理解では、Music Storyのようなメタデータのクリーンアップサービスは手作業に依存する傾向があり、また気分やテンポ、ジャンルの詳細といった記述的なデータに焦点を当てています。
私たちはすべてのストリーミングデータを集約して日々提供しているので、異なる立場にいます。パフォーマンスデータと顧客を接続するのが私たちであり、自社コンテンツだけでなく他のすべてのパフォーマンスデータを見ることができる唯一の場所です。
榎本:メタデータの会社という訳ではないということですね。
S.R.:私たちもメタデータを扱うQuansicというサービスも持っていますが、そこで焦点を当てているのは、識別子ベースの自動マッチングです。これはメタデータのクリーンアップサービスが行っているような記述的なデータとも異なります。
榎本:なるほど。Quansicについては後ほどデモ画面を見せていただきます。
10〜25%の音楽が正しい売上を得ていない
榎本:基本的な質問をさせてください。なぜ音楽の識別子やメタデータが必要なのでしょうか? 読者のために説明していただけますか。
S.R.:例えば私の好きなLiSAの場合、日本のロックとポップでのLiSAと、BLACKPINKのメンバーのLISAがいます。他にもLISAというアーティストは世界で20人以上います。
世界では何兆ものストリーム、何百万ものアーティスト、何百もの国々の中で同じ名前を持つ多くのアーティストが活動しています。識別子ではなく名前や曲名に依存しようとすると、アクティビティを理解することが本当に難しくなります。
榎本:マーケティングもそうですが、そもそも識別子が無いと集金もままならないのでは?
S.R.:そのとおりです。アクティビティの10〜25%がレーベル、音楽出版、ディストリビューターへ適切に報告されていないとわかっています。
榎本:音楽識別子を軽んじると、10〜25%も売上を失ってしまう?
S.R.:私たちはそれを修正し、企業が遡って請求できるよう支援すると同時に、修正されたデータをレーベル、ディストリビューター、パブリッシャーに送り返して問題を解決しています。
それと大事なことはシステム、自動化、AIなどのすべての利点は、データが正しいという基盤の上に成り立っているのです。
榎本:アルゴリズム・マーケティングの時代ですから、正しい識別子が楽曲に付加されていないと、SNSや音楽配信で楽曲がまともにプッシュされない訳ですね。これは国内に限っても重要でしょう。
音楽サブスクやディストリビューターにも協力
榎本:今、話題に出ましたがBelieveやTuneCoreのようなディストリビューターとも仕事をしているのですか?
S.R.:はい。第一に、彼らが持っていないアーティストとそのアクティビティを理解し特定できるようにすることで、そのアーティストへのマーケティングの優先順位付けやストーリーを伝えられるようになります。
同様に、ディストリビューターがApple、Amazon、Spotify、YouTubeのような異なるプラットフォームで、アーティストを可能な限り目立つように検索やアルゴリズムで表示できるよう、メタデータをアップグレードする情報も提供しています。
たとえば識別子が間違っていたり、DSPのコアとなるパフォーマンス・メタデータが正しくなければ、そのアルゴリズムに音楽を載せることができず、見つけられません。他にも、ディストリビューターがどのようなアクティビティが起きているかを見る方法はいくつかあります。
榎本:SpotifyやApple等のDSPのエディトリアル・チーム(プレイリストを編集するチーム)やアルゴリズム・チーム(レコメンデーション・エンジンのチーム)とも協力されているのですか?
S.R.:具体的な内容は共有できませんが、私たちは自社のプラットフォーム以外で何が起きているか、その情報をDSPに提供しています。彼らは様々な目的で使用しています。異なる国々での情報も含まれており、DSPはそれを使って自社のサービスを改善・調整しています。
未発見の10〜25%の楽曲利用を追跡して売上化
榎本:先ほどのQuansicも説明してもらえますか。メタデータのサービスですね?
S.R.:はい。2023年後半、LUMINATEはフランスのQuansicを買収しました。この企業を率いる創業者のナタル氏は以前、YouTubeとCISAC(著作権協会国際連合)で働いており、レコーディングと作詞作曲の識別子の接続問題に関するエキスパートです。
この1年間で、私たちはQuansicを「LUMINATEデータエンリッチメントおよびマッチングサービス」と呼ぶものに統合しました。私たち自身のためだけでなく、レーベル、ディストリビューター、DSP、出版社に対しても、データのマッチングとエンリッチメントを提供しております。
ご存知のように、録音にはISRCという識別子があり、作詞作曲にはISWCという識別子があります。QuansicはISRCとISWC両方のリンキングを提供しており、先ほど話した言語の問題や、同じ名前のアーティストの識別子の接続問題も解決しています。
榎本:つまり、Quansicで保証された音楽識別子をLUMINATEが確保したということですね。
スコット・ライアン: はい。
榎本:他のライバル、例えばAudible Magicと比べると?
S.R.:Audible Magic 社のようにUGC(YouTubeやTikTokなどユーザーが作成したコンテンツ)に焦点を当てている企業は複数あります。違いは、私たちの場合、UGC上で未確認の楽曲利用(アクティビティ)を見つける支援だけでなく、メタデータを修正してレーベル、出版社、事務所へお伝えできることです。
榎本:つまりLUMINATEならデータの修正も可能?
S.R.:はい。まず未確認のアクティビティを発見すること – 先ほど話した10〜25%の部分ですが – そして修正したデータを送り返して、楽曲利用料の請求額を素早く訂正できるようにします。
榎本:リアルタイムで?
S.R.:リアルタイムに近い毎日更新です。音楽出版の場合、多くのケースで支払いが6〜18ヶ月後になることと比べると、毎日というのはかなり速いはずです。
榎本:正確で安全な音楽識別子を持っているだけでなく、リアルタイムで世界中をカバーしているというのが特徴ということですね?
S.R.:はい。我々は個々の国だけでなく、世界中で識別子の問題を解決しようとしている唯一のグローバルパートナーであり、認証された情報源からデータを得ているということは非常に強力です。
質の悪いデータは損失を生むだけ
榎本:突っ込んだ質問です。「LUMINATEは素晴らしいが高額だ」という話も聴きますが?
S.R.:これは日本だけでなく世界中で耳にします。価格は高く見えるかもしれません。なぜなら多くの場合、企業は過去にこのようなデータや情報へのアクセスを持っていなかったからです。
しかし、思い出して下さい。企業の最も高額な支出は人件費です。スタッフを最も価値のある仕事に向かわせることができることが重要なのです。
ですから、最も重要なマーケティング活動が何かスタッフが知らなかったり、音楽がどこで使用されているのか把握できず売上が減っていたりといった以前の状況と比べた場合、LUMINATEが信じられないほど高い価値を提供していることにクライアントは気付いて下さいます。
榎本:「安いから」というだけで選ぶと、悪いデータでお金を失う可能性があるということですね?
S.R.:間違ったマーケティング・キャンペーンを行ったり、間違った国や地域をターゲットにしたり、あるいは非常に大きくなる可能性のある様々なアーティストを見逃す可能性があります。
そう、データの使用は本当に重要です。間違ったデータは、データがないことよりもずっと高くつきます。正確でなく、タイムリーでない情報を使用することは、ビジネスにとって非常に困難をもたらす可能性があります。
榎本:情報の差が戦局を決めるのは古からの習わしですね。
海外のコンサート・プロモーターはなぜデータを必要としている?
榎本:既に日本にクライアントをお持ちなのですね?
S.R.:名前は言えませんが日本のレーベル、出版社、コンサート・プロモーターなどが私たちと一緒に仕事をしています。
榎本:先ほどの「LUMINATEのデータが通貨になっている」という話が面白かったのですが、海外のコンサート・プロモーターはなぜデータを必要としているのですか?
S.R.:ストリーミングによって音楽が一層グローバル化し、多くのアーティストが自国外で人気を得るようになりました。ですが、向こうからすれば他国のアーティストを理解するのは難しく、ツアーは非常に高額です。
しかしLUMINATEのデータがあれば、アーティストは大きなファンベースがあることをプロモーターに証明できます。私たちは、アーティストがストリーミング・アクティビティがあることを示してツアーを決めるケースをいくつも見てきました。
逆もしかりで、現地のプロモーターがアーティストに、このイベントがどれだけ人気があるかを示し、彼らの会場でツアーを行うよう働きかけるのも見てきました。ストリーミングがツアーを推進する本当に重要なシグナルとなっているのです。
榎本:日本のアーティストが海外に行き、海外でツアーを行う際に重要な話ですね。
S.R.:米国であれ、アジアであれ、ヨーロッパであれ、そうだと思います。
現地で、どの曲が人気なのかのかを理解することも大事です。同じ曲が別の地域で人気があるとは限りません。アーティストがセットリストをどのように構成し、どのようにストーリーを伝えるか、その理解が現地での成功に欠かせません。
データは新人との契約額や音楽カタログの買収額の根拠になっている
榎本:レーベルでもLUMINATEのデータは通貨になっているのですか?
S.R.:新しいアーティストとサインしようとしている場合に、通貨のように機能しています。レーベルは日々、ストリーミングのアクティビティを見ていますが、それはアーティストとサインする上で非常に重要なシグナルとなっています。
榎本:新人以外だと、巨額のお金が動く楽曲カタログへの投資ではどうでしょう?
S.R.:最近、ビッグ・ネームのカタログが販売されましたが、その投資額を決める根拠に実はLUMINATEのデータが利用されています。
ストリーミングをマッピングし、特定のアーティストだけでなく、そのアーティストに似た他のアーティストを見て、アクティビティを促進できる可能性を見ることは、投資で大きな役割を果たしています。
榎本:まとめると、リスクやロイヤリティまで計算できるということですね。
S.R.:はい。
榎本:それはすごい…。
S.R.:特に作詞作曲に関しては、多くの場合、ロイヤリティの明細書を6〜18ヶ月後に受け取ることになります。しかし、そのアクティビティが毎日どうなっているかを見て、予測できることは非常に重要です。
J-POPの海外展開を実例にしたスクリーンショット
S.R.: ツールのスクリーンショットもお見せしたいと思います。読者の方々にビジュアルで見ていただけるように。
榎本:リクエストがあります。 J-POPの海外展開でサンプルになりそうなものを見せていただけますか。
S.R.:そうしましょう。(以下、解説より抜粋)
▲② 出典:ルミネイトCONNECTサービス 某アーティストのUSにおけるデイリーグラフ。1月以降同国でリバイバルヒットが起きていることが分かる。業界最速の48時間のディレイでデイリーデータを取得できるため、遅滞なくプロモーション施策を実行することが出来る。
▲③ 出典:ルミネイトCONNECTサービス 上記同アーティストのUSマップ。USとカナダは各都市でのスト
S.R:こうしたものと私たちのデータエンリッチメントサービスを組み合わせると、アーティストやレーベル、出版社が適切な報告と支払いを受けることができるようになります。
榎本:特にマップが素晴らしいと思いました。どの国でチャンスがあるかひと目で分かり、非常に説得力がありますね。
S.R:世界のどの地域でパートナーシップを組んでいくか、発見する素晴らしい機会です。
榎本:本日は久々にお話を伺えてうれしかったです。「データが音楽業界の通貨になっている」という話はとても刺激的でした。世界中へ飛び回る中、お時間をいただきありがとうございました。
(了)
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