音楽ハッカソンとコーライティングで “音楽×テクノロジー” を濃密に体感する3days合宿「Creators Camp in 真鶴」座談会【浅田祐介、伊藤 涼、TAKUYA、渡部高士、岩田アッチュ】

インタビュー スペシャルインタビュー

Creators Camp in 真鶴


伊藤 涼、浅田祐介、TAKUYA、岩田アッチュ、渡部高士、山口哲一(司会)L to R

 9月25日、26日、27日に、神奈川県の真鶴町にて、音楽ハッカソンとコーライティングのイベント「Creators Camp in 真鶴」が開催される。音楽とテクノロジーの関係は日々深まり続け、音楽クリエイティブも共作により加速度的にクオリティが高まっている昨今のシーンを象徴するエッジの効いたイベントだ。今回は各方面で活躍するクリエイター/音楽家の方々に座談会という形で集まって頂き、開催を一ヶ月後に控えたこのイベントについて、また最近の音楽産業を取り巻く状況にいたるまで存分に語っていただいた。

(JiRO HONDA)
座談会実施会場:朝日新聞メディアラボ渋谷
2015年8月21日掲載
  1. もっとアーティストに寄った音楽ハッカソンを
  2. 「プログラマーって最高!」
  3. コーライティングやハッカソンには「ワクワク感」がある
  4. 「真鶴」という絶妙なロケーション
  5. テクノロジーと音楽制作の現場
  6. コーライティングでは「空気を読むな」
  7. 東京の音楽制作の現場環境は破綻している
  8. スタートアップには昔のバンド的な野心がある
  9. 逆に今こそ楽器や音楽をやるチャンス

 

もっとアーティストに寄った音楽ハッカソンを

山口:エンタメ系のスタートアップ、起業志望者を対象としたSTART ME UP AWARDSを昨年始めました。その時に、同時開催した「Musician’s Hackathon 2014」を発展させて、作曲家が3人1組で0からデモを完成させる「Co-Writing Session」も併催して、「Creators Camp in 真鶴」という形で開催する予定です。

それに向けて、今日は日本を代表するクリエイターの皆様にお集りいただき、前回の感想や真鶴に向けての抱負、さらに今の時代の音楽の在り方、テクノロジーとの関係などのお話もお伺いできればと思います。

まず、昨年に続いてハッカソンのキャプテンの浅田祐介さんから、Musician’s Hacka
thonの経緯をお願いします。

浅田:もともと楽譜が読めなかった、楽器が弾けなかった僕が、なぜ音楽を作ることができたかというと、まさにコンピューターやシーケンサーといったテクノロジーのおかげだったんですね。テクノロジーと芸術は、相反するようでいて実はずっと共に進化を続けてきたという流れを、個人的にすごく実感してきました。

だから、音楽とテクノロジーが融合する音楽ハッカソンはさらに盛り上がるべきだと思うし、もっとアーティストに寄った音楽ハッカソンがあったらいいなというのが、このMusician’s Hackathonを構想したきっかけでしたね。

山口:アッチュさんは昨年のMusician’s Hackathonに参加して、最優秀賞を獲得しましたが、参加してみていかがでしたか?

「Creators Camp in 真鶴」座談会 岩田アッチュ
▲岩田アッチュ

岩田:最初は、尊敬する浅田さんからのお誘いということだけで参加したので、正直何をするイベントなのかよくわかっていませんでした(笑)。

曲でさえもメンバー以外と作ることはなかったので、普段なかなか出会う機会の無いITのフィールドにいる技術者やプログラマーのみなさんと一晩で何かを創り上げるという作業はとても刺激的でしたね。参加してすごく良かったです。

山口:アッチュさんは発想が柔軟でしたよね?

岩田:でも参加している間は本当に不安でしたよ。みんな初対面でしたし、そういう状況でチームを作るというのもけっこう驚きの体験でしたし。私は曲を作ることしかできないので、自分に何ができるのかを一生懸命考えて渡部さんのアイデアに乗せていったんですけど、閃きや自己主張もかなり必要とされましたね。

 

「プログラマーって最高!」

山口:アッチュさん、渡部さんのチーム「日本パーティ党」が作った作品「Music Dance」がメディアアートの展覧会「神戸ビエンナーレ」のアートインコンテナ国際コンペティションで入賞したんですよね。 そこまでの展開は、言い出しっぺの僕らも想像していませんでした(笑)。

渡部:確かその去年のMusician’s Hackathonの現場で、山口さんが「今日はメディアアートの発表会みたいだね」って仰ったんですよ。それで、「確かにそうだな」と思ったので、何かしらのメディア芸術祭に応募しようということで、ちょうど受け付けていた「神戸ビエンナーレ」に応募したら入賞してしまったという(笑)。

山口:メディアアートだなと思ったのは覚えています。改めてMusic Danceについてご説明いただけますか?

「Creators Camp in 真鶴」座談会 渡部高士
▲渡部高士

渡部:身体を動かすと、テンポと激しさが検出されて、それにマッチした音楽が流れるというのがMusic Danceです。風営法で客を無許可で踊らせてはいけないというのがありますよね。

それで、改めて「踊る」ということを調べたら、「音に対して体を動かすこと」ということだったんです。じゃあ、体を動かすことに対して音が出るんだったらOKだろうという、ちょっとした風刺も込めていて(笑)。

一同:(笑)

渡部:制作の時、チームのプログラマーの片岡君はすごかったですよ。ものすごいスピードでプログラミングをする人で。彼はとにかくデバックをしないんですよ。変数は必ずコピペで入力するし。

まず、「これから○○を作ります」って宣言するんですよ。1時間半でそれを作って動かしてみたらもう画面に出てるんですよ。そんな調子でどんどん作っていましたね。

「日本パーティー党」が作った作品「Music Dance」
Music Dance by 日本パーティ党

山口:前回の表彰式でアッチュさんが「プログラマーって最高!」って言ったのは名言でした。

岩田:初めはアルファベットと数字の羅列で音が出るとは思えなかったんですよ。途中までは半信半疑でした。

山口:信じてなかったんだ(笑)。

岩田:プログラミングについては全く分からないので、多分できないんだろうなと思ってたんです。でも次の日になったらちゃんと動いてて、ビックリして謝りました(笑)。

 

コーライティングやハッカソンには「ワクワク感」がある

山口:日本のプログラマーって本当に優秀なんですね。あと、ハッカソンは隣のグループの動きが分かるので刺激も受けるし、会場にはある種の連帯感も産まれるんですよ。

渡部:100人くらいの人が、徹夜でソフトを作っているのを後ろで眺めているのは単純に楽しかったですね。

浅田:いい雰囲気でしたよね。最近の音楽って、DAWの進化によって、ある種の音楽制作の「魔法」が消えてるような気がするというか。色々な事があまりにも便利にできるので、音楽を作っている時のワクワク感が薄まってきている気がしているんですけど、ハッカソンではそういう魔法があった。

山口:浅田さんは2日間ずっと、「こんなに目を輝かせている音楽の現場は、最近ないよ」って言ってましたからね。

昨年、伊藤さんと一緒に、3人1組で2日の間で曲を完成させるというコーライティングキャンプをやったのですが、そこでもみんなワクワクしたと言っていて、コーライティングってハッカソンみたいだなって思ったんですよ。多分ハッカソンよりコーライティングの方が歴史は古いと思うんですけど、伊藤さんは今コーライティングはどのような流れになっているとお感じですか?

伊藤:僕がヨーロッパに行き始めた10年くらい前、日本では作曲家が一人で曲を作ってデモを完成させて、それをディレクターに聴かせるというのが当たり前だったんですけど、ヨーロッパでは、例えばスウェーデンの音楽出版社に行ったら一つの部屋に3人くらいが集まって曲を作るということが普通に行われていました。

伊藤涼 クリエイターズキャンプ 真鶴
▲伊藤涼

そうやって作られた楽曲はものすごくクオリティが高くて、クリエイターそれぞれがずば抜けて天才というわけではないんですけど、共同作業を経ることによってクオリティの高いものが作り上げられていたんです。それで、僕もそういう方法に色々トライしてみたら、やっぱりクオリティは上がるし、そこでしか生まれない面白さや化学反応があって。

だから、コーライティングの文化をもっと日本に伝えて、少しずつローカライズしていけたらいいなと取り組んでいます。

 

「真鶴」という絶妙なロケーション

山口:今回のクリエイターズキャンプでは、コーライティングもハッカソンも日程を分けて同じ真鶴で開催します。最終日にそれぞれの作品発表を行って、そのまま交流会パーティをするという流れになっています。

そうすることで、新たな出会いもあって、様々な業界の人同士がお互い刺激を受ける場にもなるんじゃないかなと期待しています。国内外の音楽家、プログラマー、デザイナー、起業家志望者、音楽業界人、メディア関係者などが、混ざる機会ってなかなか無いですからね。

伊藤:音楽業界の人にも、「面白いし絶対に良い刺激になるから、最終日の発表会とパーティだけでも見に来なよ」って誘ってるんですが、けっこう業界の人でもハッカソンって言葉に馴染みの無い人が多かったりするんですよね。

山口:確かに。でも今回は、ロケーションも素晴らしいし、音楽やITなど、業界を問わずに、少しでも興味を持ったら来てほしいですよね。

非日常的な空間なんだけど品川から1時間半で着くし、ちょうどいい距離感だと思います。景色も良いし、どこか昭和な雰囲気も残っていて、魚も美味いと(笑)。しかも、町役場もすごく協力的なんです。

真鶴
神奈川県真鶴町

伊藤:ゆくゆくはこの真鶴のイベントに、ミュージシャンやプログラマーたちが数千人集まるようなカルチャーが出来上がったら、クリエイターのフェスみたいで面白いですね。

浅田:前回の「START ME UP AWARD」のハッカソンでは、まだみんな慣れていなくて、交流がそんなに盛り上がらなかったのが課題ではあったんですけど、今回は都内から離れますから、半ば強制的に(笑)交流が盛り上がる雰囲気になりますよね。

山口:浅田さんは本当にいろんな分野の方とも積極的に交流していて、先日もファッションデザイナーの小篠ゆまさんとファッションと音楽のレーベル「Blind Spot」を発足させましたよね。

Creators Camp in 真鶴 座談会 浅田裕介
▲浅田祐介

浅田:レコード会社が音楽を売らないで成功する、そういったことのテストケースができればいいなと思ったんです。クリエイターって常に人を驚かせないと駄目だと思っていて、昨今は、「良い曲を書く」「歌が上手い」「演奏が上手い」とかって当たり前すぎて誰も驚かないんですよね。

だから、とにかく音楽畑で音楽を売るというのを一回見直したいなと思いまして。しかも今は多くの新しいテクノロジーが利用できるし、Blind SpotもTUNECOREで成立するビジネスモデルになっていますけど、こういう試みがかなりやりやすい時代になっているなと実感しています。

山口:レコード会社じゃないとできないということが少なくなっているのは事実ですよね。

浅田:ニコニコ動画やDeNAのSHOWROOMは、いわゆるレコード会社の育成に近いことをやっているわけですからね。

 

テクノロジーと音楽制作の現場

山口:そういう風に今はテクノロジーによって音楽サービスも変容を迎えていますが、新しい取り組みをするにあたって、音楽とテクノロジーの関係性についてはみなさんどう思われますか?

渡部:制作の現場でいうと、24トラックのアナログから、デジタルのヨンパチ、その後ProToolsとかコンピューターがメインになって、またそろそろ次のパラダイムシフトの時期が来るのかなとは思っています。

でも、どれだけ良い音楽を作れるかでいうと、これは歳をとったせいかもしれませんが、昔の方が良かったと思うんですよ。

山口:それはどうして?

渡部:なぜかというと、アナログの頃は「巻き戻し」があったからなんです。これはけっこう影響が大きくて、今は音楽をループで聴いて制作しますよね。ある箇所を繰り返し流しっぱなしにして、その箇所を細かく作業するわけですが、当時はかなりの確率で頭からおしりまでプレイバックしていたわけです。それでストックを溜めていって、通しで聞いて、OKを出していた。そうすると全体の流れを聞くようになるし、ミュージシャンも何度も録れないから気合いが入る(笑)。

今は、何度もやり直せるし、ネット上でやり取りできて、作業も自宅でできる。だからやっぱり、流れを大切にした昔の方法の方がいい気がしてて、それはライブにも通じているんですよね。

(TAKUYA氏ここから参加)

浅田:テクノロジーの進化によってプレイヤーの演奏力は下がっているんですかね?

TAKUYA:YouTubeとかで見ると、正直、今の若い子の方が僕らの時代よりも何倍も上手ですけど、人と演奏するのが圧倒的に下手になっているなとは感じますね。譜面通りにきちんと演奏するといったことは今の人たちの方が上手いけど、誰かがトラブったときにも対応するような、本当の意味での「演奏する人」というプレイヤーはちょっと減っているかなと思いますね。

 

コーライティングでは「空気を読むな」

浅田:人と一緒に音楽に取り組むという部分でいうと、これから日本のコーライティングはどういう方向性に進むのでしょうか?

というのも、この間、日本女子シンクロの井村コーチが復帰して一番最初に選手に伝えたことが、「空気を読むな」ということだったらしいんですね。日本人は、団体になると空気を読んで、その場の雰囲気が悪くならないことに全力を注ぐ傾向があると。それは、個を保存させるためには有効なんだけど、団体として結果を出したいときにはマイナス要因になってしまう。

それで、コーライティングも団体で曲を作るわけですけど、やっぱり空気を読む人はいるのかな?

伊藤:いますね。というか日本人は最初はみんな空気を読んでしまいますね。だから僕も井村コーチと同じように「空気を読むな!」って言います。そういうコーライティング・マインドの作り方もちゃんと伝えないとクオリティの高いものはできてきませんね。

クリエイターズキャンプ 真鶴 山口哲一
▲山口哲一

山口:日本は同調圧力の強い社会なので、普段の生活では空気を読めないと生きにくいと思います。でも、コーライティングやハッカソンなどクリエティブな場では、別の人格を自分の中に作って、良いものは良い、ダサイものはダサイと言えるようにしないとね。

喧嘩することが目的じゃないですが、良い作品を作るためには、敢えて空気を読まないというのは、特に日本人は意識しないとやれない人が多いですね。

伊藤:日本の今のクリエイターたちはお行儀が良いので、30人集まって3日コーライトキャンプをやったとしても、ケンカなんか起きないんです。でも、海外でコーライトするとやっぱりケンカというか、トラブルは当然のように起きるんですよ。

つまり、そこまで本気でぶつかりあって良い作品を作ろうとしている。コーライティングは本来、能力やセンスが真正面から衝突する場所なんですよね。

浅田:若い世代は、そもそも普段から衝突自体がないのかな。スタジオで作業することも減ってきているし。

岩田:最近、TDとかミックスチェックも会わずにやっているじゃないですか。エンジニアさんともスカイプとかを使ってやりとりしていますし。アレンジも、リミックスもそうやって進めることができるし。

浅田:僕の場合、90%以上は自分で作曲から、録音、ミックスまで全部やるんだけど、この間マスタリングを外部に任せたら、すごく良い仕上がりだったんです。やっぱり客観性があるというのは大事なことなのかなと思ったね。だから、今マスタリングリバイバルが起きてるのかなとも感じていて。

岩田:確かに外部からの客観性って大事ですよね。昔は、なんでちょっとイコライジングするだけであんなにお金かかるんだろうって思ってましたけど(笑)。

 

東京の音楽制作の現場環境は破綻している

山口:TAKUYAさんは、今の音楽制作の現場についてどう思われますか?

TAKUYA:僕はいわゆる既存の音楽業界の枠組みからはもう抜けますということで、今活動しています。もう僕独自のやり方で、今後の音楽の仕組みを作り上げていくという答えをだしたんですね。だから、福岡でレーベルやスタジオを含め、一から新しいインフラを作り上げようとしています。

今や日本の音楽って世界で一番買いにくい状況になっていますよね。それは、やはり旧態依然としたシステムが残っているからだと思いますし、その枠組みの中で仕事をする限り、色んなことを変えようとしても、もうどうしようもないのかなと感じています。

個人的には、やはり東京の音楽制作の現場環境はコストが高すぎるし、本当はもう破綻してしまっているとすら思っています。

山口:破綻しているというのは衝撃的ですけど、それが本質なのかもしれませんね。

「Creators Camp in 真鶴」座談会 TAKUYA
▲TAKUYA

TAKUYA:ここ十年以上は、音楽業界よりもどちらかというと堀江さんとか、色々な起業家の方面のみなさんとの交流の方が深かったりして、そういう人達の活動を身近に見ていて、じゃあ僕も自分なりの構想をもっと突き詰めて、今ちょうど立ち上げて動きはじめているといった状況です。

なので、音楽家として活動したいフィールドが東京にはもうないんですね。どのスタジオも時代にあわないようなコストがかかるし。

浅田:福岡を選んだのはどうして?

TAKUYA:台北でもいいかなと思ったんですけど、やっぱり機材や人材、電源の面とか色々な面のクオリティを考えたら、日本国内しかないんですよね。

それで、日本の全都市を考えて消去法で福岡が残ったんですよ。やっぱり西日本は60hzなんで、単純にその方がギターとか音がいいですからね。

アジアの各都市に近いのも大きいですよね。上海、北京、香港、台湾でビジネスをしようと思うと東京より断然近いですから。福岡は中心地と空港のアクセスも便利ですし。

来年辺りには音楽をやっている人はみんな福岡に移住しようって呼びかけていこうかなと思っています。実際、海外でも起業やITなど様々な分野で地方に起点ができるという動きがあるので、僕はそれを日本で福岡にしようと取り組み始めています。

山口:僕もTAKUYAさんとはスタンスも立場も違いますが、音楽ビジネスの仕組み自体を作り直さなきゃいけないという問題意識は共通しています。

世界では新しい音楽関連のITサービスが日々どんどん広まっていますが、そういうサービスと音楽家の関係をどう思われますか。

TAKUYA:Spotifyとかは英語圏とか大きいマスがあってこそのサービスだと思います。音楽産業の売上がこれだけ下がっている中で、業界人の数はそんなに減っていませんし、業界の人の方が音楽家より給料が良かったりするわけですよね。そこを維持する為のあの手この手の音楽ビジネスが産まれているわけで。

だから、音楽家としては日本的な仕組みを変えるのか、あるいはどんどん海外に出て行ってそこで稼ぐようにするしかもう夢がない気がします。

山口:結局、全体が成長していれば、みなさん不満は持たなくなるんですよね。だから、海外へ進出する、新しい枠組みを作る、全てを含めて全体を成長させていくことが大事だと思います。

浅田:でもCDというプロダクトはもうダメですよね。今の若い人たちにCD盤を見せると、「あー、それ団地に釣り下がってますよね」とか言われて(笑)。

一同:(笑)

浅田:最近、音楽プロデューサーの鈴木Daichi秀行さんが自分でレーベルを作って、作品をリリースしたら、CDは完売しないけれどUSBメモリは即完すると言っていました。

TAKUYA:USBメモリにしてみたり、Tシャツにバーコードをつけてみたり、ハイレゾだったり、みんな色々試しているけど、やっぱりどれが正しいかは誰もまだ分かっていないんですよね。

 

スタートアップには昔のバンド的な野心がある

山口:データ的に見ると、2014年はCD売上を、コンサート売上が上回った年だったので、名実共に音楽産業の主役が変わったことがデータ的にも証明された象徴的な年でした。だから、未だに音楽業界=レコード業界だというのは誤解なので、社会に正しい認識を広めないといけませんね。

僕は社会における音楽のイメージも気になるんですが、若い世代で今はバンドをやっていて女の子にモテるんですかね?

岩田:モテないでしょう。

山口:ハッキリ言いますね(笑)。

岩田:モテないですよ。YouTuberとかの方がモテる気がする(笑)。

TAKUYA:バンドで成功するというロマンがあったじゃないですか。その形が、今はもしかしたら、ITのスタートアップなのかもしれないですね。彼らにはきっと昔のバンド的な野心がある気がします。だから、音楽もITのプログラマーと共作するような新しいムーブメントが起きて欲しいなと思いますね。

渡部:私が小さい頃って、音楽はそれだけで純粋に楽しんでいたんですけど、最近はやっぱり音楽が「他のモノ」に付随する存在にどんどんなっていますよね。僕の中学二年の子供もYouTubeでしか音楽を聴かないわけですよ。そこには当然映像があるし、楽しみ方がどんどん純粋な音楽だけじゃない方向へ向かっています。

かつては文化の中心が音楽だった気がするんですよ。それこそ女にモテたとか、ファッションもそうで。

山口:音楽家が着ている洋服を、ファンが着て売れるという現象を聞かなくなった気がします。例えばEDMのファッションと言われても、パンクやロックのそれとは、もう違ってきているというか。

「Creators Camp in 真鶴」座談会

 

逆に今こそ楽器や音楽をやるチャンス

TAKUYA:音楽がそういう存在だった時代はとっくに終わっていて、その後ITとかに移り変わったんじゃないですかね。当時、僕がなんでギターを始めたかというと、単純に儲かりそうだったから。

それで面白いのが、今は音楽文化が無くなったというところからまた一周して、チャンスだと思って楽器をやっている若い子達がいるんですよ。今はITが時代を変えているけど、それさえも終わりかけだと言われていて、今の十代とかの若い子はそろそろ楽器とかできた方がレアで「ありがたがられる」というのに薄々気がついているから、楽器を持つ子が結構多いんですよ。

実際、僕も最近ギターが上手いからって周りからの扱いがだんだん良くなっている(笑)。ギターが上手なことに対してのレア感と価値感を感じていますよ。10年前には何も言われなかったのに(笑)。

一同:(笑)。

山口:最後に、今回のハッカソンとコーライティングの目標をお聞かせ下さい。

浅田:楽譜からレコード、レコードからCD、そしてCDから次へと向かいつつある今の時代の中で、人々が音楽に接触する、手に入れることに関しての、全く新しいアイデアや糸口が出てくると良いなと期待しています。

山口:伊藤さんはコーライティングの方でいかがでしょうか?

伊藤:ただ単にミュージシャンやクリエイターが集まって、合宿して楽しかったというのでは仕方がないなと思っているので、アウトプットとして、作った物がきちんと世の中に発信されるということは最低限のゴールとして考えてもらいます。

一流のアーティストの楽曲として採用され、その上で、きちんと商業的に成功して売上をシェアしてみんなで幸せになる。ここまでをチームの目標として、貪欲に素晴らしい音楽を作ってほしいと思っています。

山口:90年代のCD全盛時代を支えたのも、サウンドプロデューサーたちでした。2010年代後半になってテクノロジーの進化が、高いクリエイティビティを求めるようになっている今、今日集まっていただいた皆さんの役割は、ますまう大きくなっていると思います。クリエイターズキャンプ真鶴が、変化のキッカケになることを願っています。

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